ニッポン縦断
8月1日(火)晴れ、気温29℃
岡山県立水島工業高校の実習プラントにびっくり
瀬田(滋賀県)→大阪→倉敷(岡山県)→広島(広島県)
昨夜は、油籐の青山さんの紹介で琵琶湖の南の端、大津市に宿をとった。滋賀県内のホテル”で最初にISO14001認証をとった瀬田アーバンホテルだ。今年の3月からは油藤のBDFを使用して送迎バスを走らせているという。担当の片岡さんにお話を伺ったところ、取り組み当初は「それって儲かるの?」「手間ばかりでメリットあるの?」などと冷ややかな意見もあったそうだが、今では多くの宿泊客に大変好意的に受け止められているという。実際に宿泊してみて、環境に配慮する意識がその他の細かい気配りにも良い影響を与えていることを実感する。「一番の成果は、従業員の意識向上」と笑顔で話す片岡さん。単なるポーズではなく、サービスの向上やコストセーブによって、しっかり経営上のメリットも見据えている片岡さんに、バランス感覚に長けた近江人気質を感じた次第。お見事です。
今日は西へ向けて距離をかせぐ日だったが、新聞を見てご連絡をいただいた大阪の不二製油に急遽お邪魔することになった。失礼ながらどんな会社かわからぬままに関西空港近くの本社に向かうと、広大な敷地と巨大な本社ビルにビックリ。植物性油脂製品の国内最大手で、僕らもこちらの食材を間違いなく口にしているらしい。(世間しらずですいません。)
ご連絡頂いた古田さんをはじめ、食用油のプロの皆さんに世界的な植物油事情についてお話を伺う。植物油のエネルギーへの利用促進が、食用油の慢性的な供給不足に追い打ちをかける可能性があるという。ヤシやパームの栽培による環境破壊の問題もある。バイオマスエネルギーの複雑な事情の一面を垣間見たような気がした。古田さん、貴重なお話ありがとうございました。
西へ距離をかせぐと言いつつ、実は具体的な給油地が決まっていなかった。頼みの綱が岡山県倉敷市にある県立水島工業高校。BDFの製造を実習に取り入れた先駆けの学校ということで今回の旅で是非訪問したい場所のひとつだったが、夏休み期間でもあり確実なアポイントメントがとれていなかった。移動しながらの電話攻撃で担当の森先生をつかまえると、急な訪問の申し出にもかかわらず快く応じて下さった。
いってみてまた驚いた。生徒の実習用ということで手作りの小規模なものを想像していたが、校舎奥の実習棟には、今までみた中でもっとも大規模で本格的なプラントが、担当の先生方の笑顔とともに待っていた。
この高校がBDFに着目したのは1998年。環境にクリーンなテーマで化学反応を学習させたいというのが発想の原点だ。2000年には小規模な精製装置を完成させ、授業に取り入れるようになる。自分で作った燃料で機械を動かす喜び、あるいは廃食油の回収を通じた地域社会とのつながり。実習は当初の予想を越えた成果をあげ、全国的にも注目される成功事例となり、やがて国と岡山県がサポートしての本格的なプラントへと発展することになる。当時設計を担当した服部先生の熱い解説で、工夫が凝らされたプラントを見る。授業時間に合わせ、たった六時間の工程で完璧な品質のBDFができるように設計されているという。今は指導の第一線を退かれた服部先生だが、目を輝かせて話すのはこれからやりたい新しいアイディアの話ばかり。まわりでクスクス笑っている先生たちの姿が、いたずらの相談をする少年達の姿にだぶって見えてくる。う〜ん、ここの生徒達は幸せかもしれない。
実習で作られたBDFを分けて頂きながら、来年、車に小型プラントをのせて各地で燃料を作りながら世界一周したいという夢をうち明けると、「面白い!」とたちまち2、3のアイディアが出て、その設計に一役載っていただけるというお話まで飛び出す。こんな好奇心いっぱいの先生方の知恵を拝借できたら、きっと独創的なものができるのではないかと、うれしくなってしまった。
本日の走行距離:591.8km
給油:40L (岡山県立水島工業高校)
<つづく>